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オーストラリアの時代、再び

Saturday 20 February 2016 • 5 分で読めます
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この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。先週公開したAustralia's slimline Chardonnays, Australian Shiraz - what's hot, what's cool, Neb, Sangio and friendsも参照のこと。

長い間に私はアルコールと人混みの組み合わせには耐性ができているのだが、先週のワイン業界向けテイスティングはあまりの大混雑で、これまでの経験上初めてめまいを感じたほどだった。

かつてイギリスのワイン業界カレンダーで1月末にロンドンで開催されるオーストラリア・デー・テイスティングが燦然と輝いていた時代があった。1990年代には挑発的にもクリケット場で開催され、しばしば雪が降ったために日焼けしたオーストラリアのワイン生産者はほぼ氷点下の気温に短い間ながらも晒されることになり困惑していたものだ。一方我々イギリス人はと言えば、オーストラリア・ワインのおいしさを発見し、バロッサやハンターから来た人々のおおらかな雰囲気を楽しんだものだ。

だが今世紀初頭、そのイベントへの興味がなぜか冷めていき、その傾向はオーストラリア・ドルの高騰で悪化し、オーストラリア・ワインの印象はいつしか、必ずしも有益とは言えない一握りの大手に支配されていった。

ところが今年、イギリスのワイン業界のオーストラリア・ワインに対する興味は、ヴィクトリアにあるリンドリー・ホールでの大混雑から見て再燃しているようだ。私はこれがオーストラリア・ドル安の影響だけではないと考えている。オーストラリア・デー・テイスティングを運営したワイン・オーストラリアはいつも同じ名前が並んでいた参加ワイナリーについて方針を変更し、敢えてその間口を広げたのである。

今年は1000種類のワインを提供した58団体のうち約4分の1がオーストラリア・ワインの新顔とも呼ぶべきワインを出展していた。必ずしも聞き覚えのある名前ではなく、けして大企業ではなかったが、その規模や技術には職人的な空気を感じた。長きにわたりオーストラリアで最高級の小規模家族経営ワイナリーを一手に輸入してきたあのリバティ・ワイン以外に、「産地の見えるワイン」に特化したハロウド・グラウンド(Hallowed Ground)や、「オーストラリア・ワイン革命の最先端にいる職人的な生産者」を専門とする夫婦が経営するオージー・ルールズ・オブ・グラスゴー(Aussie Rules of Glasgow)、昔からのインポータ、ABSが立ち上げてはいるが、生産量が年間1万ケース未満で現在はセラー・ドアだけで販売しているワイナリーに限定したオーストラリアズ・ベスト・ケプト・シークレッツ(Australia's Best-Kept Secrets)などが出展していたのだ。オーストラリアのワイン・シーンの今に対するイギリス人の自信の表れだろう。

また、単体の生産者出展もあり、例えばヴィンテローパー(Vinterloper;「クラフトビール・メーカーや職人気質のパン屋のように、小さな単位でワインを作ります」)や、インポータを探しているイタリア系のダル・ゾット(Dal Zotto)、トッド・デクスター(Tod Dexter)のもとに数組の兄弟たちが集まって「飲み心地の良さ」を何よりも追及した冷涼なヴィクトリアのワインを作るルート・デュ・ヴァン(Route du Van)などである。このバラエティ豊かな出展者のおかげで参加者の数は記録的な(私にとっては気付け薬が必要になるほどの)1200名以上となり、主催者は来年のイベントをさらに大規模にすると意気込んでいる。

ニュージーランドのワイン生産者たちも同様な方針に変わってきた。ロンドンでのテイスティングに活気がなくなってきたことを踏まえ、彼らもまた小規模生産者に目の回るようなニュージーランド・ハウスの最上階で先月開催されたイベントに参加するよう働きかけ、毎度の出展者だけでなく小規模なアーカンジェル(Archangel)、クロ・マルグリット(Clos Marguerite)、ジョージ・ミッシェル(Georges Michel)、ジュールス・テイラー(Jules Taylor)、ユリヒャー(Julicher)、マウント・ビューティフル(Mount Beautiful)、オパワ(Opawa)、サパー・クラブ(Supper Club)などが参加した。

これらの戦略は素晴らしいものだが、同時におそらく避けがたいものだったのだろう。ワインの世界には今変革の風が間違いなく吹いているからだ。若い世代が前の世代とは全く違うことをやっていた時代がいつだったのか私は思い起こすことができない。オーストラリアやニュージーランドだけでなく、思いつく限りのフランスを含むあらゆるワイン生産国で、である。そのような冒険を冒す勇気のないプレゼンテーションは次第に力を失っていくということだろう。これは現在非常に多くのワイン・バイヤーが同じ嗜好や考えをもつ同じ若い世代であるということだけではない。

この動きはオーストラリアのあらゆるワイン産地で見られるが、その活動の核は必然か否か、間違いなく一か所に集中している。この新しい波のすべてがナチュラルワイン運動に会費を支払っているメンバーだけによるものとは言わないが、明らかに大きな傾向はある。全房発酵、低アルコール、新樽比率の低下、より自然な酸、長めの澱との接触、めずらしい品種などだ。

このわんぱく坊主たちが最も多く集まる場所の一つがアデレードの東、はるか北にあり名声を確立したバロッサ・ヴァレーよりはるかに気温の低い丘の上だ。無名のワイナリーとアデレード・ヒルズの組み合わせはある意味新進気鋭のオーストラリア・ワインを探す近道と言えるかもしれない。オーストラリア中のほかの多くの新顔同様、これらの生産者は多くがシラーズではなくシラーとラベルに書かれた赤ワインを作り、それは凝縮して甘みのある、はっきりと樽を感じ、時に甘すぎるオーストラリアの昔ながらのシラーズとは全く異なる。この木々に囲まれた地域はまた、非常にフレッシュなソーヴィニヨン・ブランを作るのに適切な、オーストラリアでは数少ない冷涼な産地の一つでもある。

もう一つ小規模で熱心な生産者の野心と才能の核となっているのがヴィクトリアの北東にある古い炭鉱の町、ビーチワース周辺だ。ここは比較的最近設立した生産者が多く、たいてい数ヘクタールしか畑を持たない者たちが素晴らしく良いワインを赤白両方作っている地域だ。ビーチワースで最も有名な生産者、ジャコンダ(Giaconda)の至宝を何年も追いかけていたので、私はこれらの生産者が作る素晴らしいシャルドネを味わってもそれほど驚かなかったが、バローロやバルバレスコで使われる非常に気難しい品種、ネッビオーロから本当にワクワクするようなワインが作られているとは思ってもみなかった。

言うまでもなく、オーストラリア人たちはオーストラリアの栽培者の間で今非常に人気の高い、特に暑く乾燥した環境にうまく適応した多くの輸入品種を使い自分たちの個性を表現している。そしてかの尊敬を集めるネッビオーロは「ネブ」として、トスカーナの相棒、サンジョヴェーゼは「サンジョ」と呼ばれているのだ。

だがおそらくこんな無礼はそこから生み出された液体が飲む価値のあるもので、地球上で作られるワインにさらなる興奮をもたらしてくれるのであれば許されてしまうだろう。

私はアメリカでずっとオーストラリア・ワインは全く時代遅れだと聞かされ続けた。このことは、それが私たちにとって大きな意味を持つと知っている、あの日そこにいた我々1200人以上のテイスターにとって、嬉しい知らせと言えるかもしれない。

お気に入りのオーストラリア・ワイン

以下は最近私が出会った特に印象的なオーストラリアの新風と言えるワインのほんの一例だ。取扱業者はwine-searcher.comによる。

Bellwether, Tamar Valley Chardonnay 2012 Tasmania

BK Wines, One Ball Chardonnay 2013 Adelaide Hills

Domenica Roussanne/Marsanne 2013 Beechworth

David Franz, Long Gully Road Ancient Vine Semillon 2013 Beechworth

Haldon Chardonnay 2013 Beechworth

L A S Vino, CBDB 2013 Margaret River

Piano Piano, Sophie's Block Chardonnay 2012 Beechworth

A Rodda, Smiths Vineyard Chardonnay 2914 Beechworth

Reds

Baarmutha Shiraz 2013 Beechworth

Ochota Barrels, Shellac Syrah 2013 Adelaide Hills

Oxenbury, The Twins Vineyard Nebbiolo 2012 Beechworth

SC Pannell Syrah 2014 Adelaide Hills

Tolpuddle, Coal River Valley Pinot Noir 2014 Tasmania

これらのワインのテイスティング・ノートも参照のこと。 tasting notes searchに生産者かワインの名前を入力して検索するだけだ。

原文

(ヴィンテージ違い)

(ヴィンテージ違い)

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