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帰ってきたブルネッロ

Saturday 11 July 2015 • 5 分で読めます
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これはフィナンシャル・タイムズに掲載された記事のやや長いバージョンである。ウォルターの「January 2015 tasting notes 」とアレックスと私の書いた「June 2015 Brunello Night」のテイスティング・ノートも参考にしてほしい。

2010の素晴らしい品質のおかげもあって、ブルネッロがイギリスに帰ってきた。

アメリカ人にとってはもちろん、帰ってきたもなにもないだろう。ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ協会はトスカーナの偉大なワインをプロモーションするために設立された組織で、2002年以来アメリカで毎年二回のテイスティングを開催しているからだ。毎年1月には、協会が最新のヴィンテージを業界向けテイスティングとしてニューヨークともう一都市で出展している。

しかし、この協会がイギリスでそのようなテイスティングを開催したのはたった3回、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの1998、1999、2001のヴィンテージを業界およびプレス向けにロンドンで出展したのみであり、最後のイベントは9年も前のことになる。

確かにイギリスはブルネッロにとって最も重要な市場とは言えないが、それは鶏が先か卵先か、と言えるだろう。長い間アメリカでは上質なイタリアワインへの熱狂的な需要が高く、それは多くの(そして資金にあふれた)イタリア系移民に後押しされ、フランスワインが幅を利かせるイギリス市場とは比べ物にならなかった。また、ドイツ語を話す人々はブルネッロやバローロをお気に入りの生産者からメルセデスやBMWで容易に運ぶことができたため、運河を使い、関税消費税庁が設定した数々の経済的ハードルを乗り越え船で移送する我々と比べてかなり有利だ。

我々イギリスのワイン専門家はロンドンが世界の膨大なワインをテイスティングする機会にいかに恵まれているかをいつも自慢しているが、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの大規模なテイスティングが開催されたのはこの9年間で先の2月だけである。これはひとえに非常に情熱的なジョス・フォウラー(Joss Fowler)のおかげと言える。彼は当時ファイン+レア(Fine + Rare)の高級ワイン担当で(vinolent.netで記事を書く洗練されたブロガーでもある)、63本のブルネッロ2010をバーモンドジーにあるこの高級ワイン仲介業者のオフィスで開けたのだ。

先月、我々ジャンシスロビンソン・ドットコムのメンバーがそれに続き、プロではなく愛好家を対象としたテイスティングを開催、43本のブルネッロ2010をキングスクロスのキャラヴアン(Caravan)でテイスティングした。我々は以前にもそこで20092010のバローロを紹介したことはあったが、今回のブルネッロ・ナイトは同じぐらい好評だった。おそらくイギリスに拠点を置く愛好家たちはこのワインに興味津々だったのだろう(とはいえ、サン・ディエゴやチューリッヒなどの遠方からの参加者もいた)。

ニューヨーカーの皆さんへは10月14日水曜日にウォルターと私が同様なテイスティングをイータリーで開催することをお知らせしたい。イータリーは驚くほどあらゆるイタリアの食材と飲み物で満たされた商業施設であり、我々が選んだ多くの生産者もこのイベントに参加する。また、サイン入りの最新のオックスフォード・コンパニオン・トゥ・ワイン第4版を手にするチャンスとも言える。さあ、もう参加しないわけにはいかないだろう。予約方法を含む詳細はこちらだ。

ブルネッロはその斜陽時代からようやく這い上がってきたとも言える。丘の上にたたずむモンタルチーノはトスカーナの南部に位置し、ブルネッロゲートと呼ばれる「五つ星級の」問題が巻き起こった街だ。2008年、非常に有能な生産者を含む数人が、カベルネやメルローなどの国際品種をブルネッロ・ディ・モンタルチーノにブレンドしたとして糾弾されたのだ。ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは本来ブルネッロ、すなわち地元のサンジョヴェーゼのみで作らなくてはならないワインである。このことがモンタルチーノに内省と辛辣な相互批判を生んだのだが、長い間ブルネッロをテイスティングしてきた私から見ると、この問題が明るみに出たことでよりピュアな本物のワインを生み出すことにつながったのではないだろうか。

モンタルチーノはトスカーナの内陸部でも最も温暖な地域の一つで、当然ワインにもそれが反映される。同じブドウから作られているにもかかわらず、色が薄く痩せて酸の強い普通のキャンティとは全く異なる。味わい豊かで磨かれていて力強い、凝縮感のあるサンジョヴェーゼの作品と言える。しかし1990年代後半のヴィンテージのロンドンでのテイスティングを思い起こすと、当時のそれはまるでカリフォルニアのようだった。小型の新樽の影響が強かったし、中にはフランスの品種の影響を感じるものさえあった。

確かに、先日テイスティングした43本のブルネッロ2010はイタリアワイン専門家であるウォルター・スペラーが140ものサンプルをヴィンテージがリリースされた1月にモンタルチーノでテイスティングした中から厳選したものだった。しかし、私は樽が強すぎるワインがほとんどないことを発見し嬉しくなった。ほとんどが輸入されたフランスの新しいバリックではなく、伝統的な大きな古いカスクで熟成したと考えられる味わいだったのだ。どのワインも陽の光を浴びて成熟したサンジョヴェーゼの香りがし、本来そこにあるべき香り以外は感じられなかった。特にその中で最高の物は、本当に晴れやかで香りたち、思いつく限り最も香り高くかつ重さのないサンジョヴェーゼといったところだろう。

だが、若いブルネッロは口の中の水分がなくなるほどタンニンが強いワインであるという事実は逃れようがない。私は口の中に水分を取り戻すため何度も水を飲まなくてはならなかった。しかし、そのアロマはすでに魅力的で、ウォルターのセレクションは常に味わいの中盤に十分な果実味を感じることができたため、その熟成のポテンシャルの高さを確信した。

スタイルは、パデレッティ(Padelletti)のように透明感のあるピュアなものからマテ(Maté)のブルゴーニュのような果実味、あるいはマストロヤンニ(Mastrojanni)の密度が濃くがっちりしたものまで様々だった。その多くは、ピオンディ・サンティのイル・グレッポ(Il Greppo)のような明らかにあと20年は熟成すると思われるワインもあったものの、どれも今も楽しむことができるものだった。

これらはワインを若いうちに買ってその熟成を楽しむ人々にとって最高のワインであり、しかも最高級のバローロに比べて基本的には安価である。バローロのような地理的な単一性には欠けるかもしれないが、その多くは偉大なブルゴーニュのように定評のあるはっきりとした単一畑の個性を表している。多くのブルネッロはボルドーのシャトーのように個々の生産者の名前で販売されている。

しかし栽培面積はポヤックが約12マイル四方なのに対しモンタルチーノは75マイル四方に届くほど広く、そこに住んでいるか地元の地形に詳しくない限りワイン消費者はそれぞれのワインがいったいどこで作られたのか把握することは難しい。産地に執着するこの時代、多様なモンタルチーノの地域にサブリージョンを指定する議論がなされている。

これまでモンタルチーノの最も暑かったヴィンテージ、例えば1997や2009が最も偉大な年とされてきたが、2010の品質は自然の酸に固執することがどれだけ重要かを示している。生産者の中には2010はけして良い年にはならないと考えていた人々もいる。春は雨が多く、開花は不均一で8月はかなり涼しく安定しているとは言い難かった。しかしブドウは酸を高くとどめ、暖かな9月に勢いづき、その結果としてワインは豊かで引き締まったものとなったではないか。ブラボー!

ブルネッロよ、イギリスへお帰りなさい。そしてアメリカでも、このワインへの情熱が再燃している。ニューヨークのレストラン経営者でイタリア専門家のジョー・バスティアニッチ(Joe Bastianich)はこう言った。「ブルネッロゲートの余波で確かに陰りが見えましたが、モンタルチーノは安定して回復し、ブルネッロの地位を世界屈指の高級ワインとして再確立しつつあります。アメリカ人は常にトスカーナとそこで生み出されるものが大好きです。私たちはここアメリカでトスカーナのワインを本当に愛し、ブルネッロはその多くを占めているのです。」

すばらしいブルネッロ2010

私がテイスティングしたのは200以上のワインのうちたった43本だが、以下がそのお気に入りである。お買い得品を探す向きには早熟なロッソ・ディ・モンタルチーノ2010がお勧めだ。

Barbi £34 Great Western Wine
Biondi-Santi, Il Greppo £660 12本あたり保税価格 Bordeaux Index
Canalicchio di Sopra
Caparzo £31.95 Ten-Acre Wines
Celestini Pecci
Conti Costanti £39 Eclectic Tastes
Crocedimezzo
Fornacina
Fuligni
Lazzeretti
Il Marroneto
Padelletti
Il Paradiso di Frassina
San Polino
San Polo £36.95 Four Walls Wine
Sesti £195 6本あたり保税価格Cru World Wine
Terralsole £201 6本あたり保税価格Fine + Rare

原文

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