ヴォルカニック・ワイン・アワード | The Jancis Robinson Story (ポッドキャスト)

2021年ヨーロッパの収量は霜害で減少

2021年4月17日 土曜日 • 5 分で読めます
Stop Gel anti frost 'candle' in Bordeaux vineyard April 2021

all images by Gavin Quinney of Ch Bauduc in Bordeaux

自然とはかくも残酷なものか。上の写真は霜対策に使われるキャンドルで、先週撮影されたものだ(すべての画像はボルドーにあるシャトー・ボーダックのギャビン・クイニー提供)。この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

4月19日追記:フランス政府は霜害を受けたヴィニュロンを対象に10億ポンドの支援を行うと表明した。農業大臣ジュリアン・デノルマンディは季節外れの暖かい日のあと北極の寒気に見舞われたことが「今世紀最大の農業における惨事」につながったと話した。2021年に想定されていた収穫の三分の一が失われたとみられる。

エミリー・フォーシュロン(Émilie Faucheron)は6分間の動画の中で繰り返し涙をぬぐい、時にはすすり泣きながら、先週の霜害について語った。ラングドックの西にあるドメーヌ・ド・ラ・グランド・カナグ(Domaine de la Grande Canague)の60ヘクタールの彼女の畑が壊滅的な被害を受けたためだ。彼女と夫のベンジャミンはヴィニュロンの4代目だ。2017年にフランスに大きな被害をもたらした霜で5ヘクタールのブドウを失った際にもかなりショックを受けたが、今年は50ヘクタールものブドウが、2021ヴィンテージとなるはずだったワインを全く生産できない見込みだ。

彼女は定期的に動画をYouTubeに上げているが、今回の動画ではブドウの被害を見せるため澄んだ青空の下で畑の中を歩き回っている。まさにこの青い空が問題だった。夜間に雲がないと霜の被害が最もひどくなるためだ。南フランスのこの地で春、4月の7日から8日にかけてという時期に夜間の気温が-6℃に下がるなどと、彼女は予想だにしていなかっただろう。彼女の畑はモンタディにある村の郊外にあり、パンケーキのように平らな場所にある。そのためブドウの若芽を致命的に凍らせる霜の格好の標的となったのだ。最も冷たい空気は最も重く、ブドウに直接のしかかる。畑が斜面にあったなら重力によってその重く冷たい空気は低い方へ流れていったはずだ。ただし、今年はマシュー・ヘイス(Matthew Hayes)がブルゴーニュから報告したように、多くの斜面にある畑も深刻な被害を受けるという異常事態に見舞われた。

フランスのワイン業界誌ヴィティスフェア(Vitisphere)のウェブサイトによればフランスの多くの地域で4月6日以降3日連続して夜間に0℃を下回る気温が観測され、ワイン産地の中には-9℃まで下がった地域もあるとのことだ。

セロンの近くにあるシャトー・ボーダックの早朝の気温は-2.4℃だった。その日、4月8日の遅くにはその気温は24.8℃まで上昇している。

この被害はフランスのほとんどのワイン産地と、さらにヨーロッパ全土でみられている。ウォルターがこの記事この記事で報告しているように、イタリアの北部から中部でも、2021ヴィンテージのワインを作るべく勢いよく芽吹いていた緑の新芽や葉が今や生気を失い茶色がかった灰色に変色してしまった畑を、ヴィニュロンたちがとぼとぼと歩き回っている。今年ヨーロッパを襲った季節外れの寒気団は特にそのタイミングが悪かった。暖かい気候が続き、ブドウが通常よりも2週間早く萌芽した直後だったためだ。(それにしても、もはや「通常」という言葉を使うことははばかられる。ここのところ予測がつかない事態が多すぎる。)そして4月の初頭、多くのワイン産地では暖かく雲一つない好天を満喫する時期であるにもかかわらず、残酷なほど寒い夜が訪れたのだ。更に悪いニュースは続く。先週深刻な被害を受けたブルゴーニュやシャンパーニュでは、今週初めに再びひどい寒気が訪れる予報が出ているのだ。

冬がどんどん短くなり、萌芽がどんどん早まるということは、若木が霜害を受けるリスクが高まるということだ。多くの生産者は今、意図的に冬季剪定をできるだけ遅らせることで生育期の開始を遅らせるように努めている。このことは特に萌芽の早いシャルドネのような品種では重要だ。

2021ヴィンテージの収量がどれほど減ってしまうのか、正確に算出することは現時点では難しい。生産者たちは二番梢がどれほど出てくるか見守る必要があるが、一般的に二番梢には多くの実はつかず、今回失われてしまった一番梢に比べて成熟も遅くなってしまう。一つ確かなことは今回の霜害は2017年と1991年のフランス、そして2003年のイタリアで観測されたものと少なくとも同じぐらい深刻だということだ。

ヨーロッパの多くのヴィニュロンたちは干ばつ、雹、そしてパンデミックによる制限などで既に疲れ果てている。さらに2019年10月から2021年3月にEUから輸入される大多数のワインに25%もの関税をかけたアメリカの政策が追い打ちをかけた。この点でフランスの生産者は既に公的支援を受けているが、この状況では更なる支援が必要となることは間違いない。

エミリー・フォーシュロンなど南フランスのヴィニュロンたちは霜に対して免疫がない。なぜなら(少なくともこれまでは)かの地のように温暖な場所でめったに起こらない自然現象だからだ。同様にフィトゥのジャン・マルク・アストラック(Jean-Marc Astruc)は先週の霜で自身の名を冠したドメーヌの14ヘクタールの畑のうち、2021ヴィンテージの70%を失ったと話している。

一方でブルゴーニュのコート・ドールでは、春の遅霜は近年珍しいことではなくなった。そのため生産者たちは特殊なバーナーや霜対策のキャンドルを点火する習慣を身につけている。そんな夜の光景はインスタ映えする素晴らしく美しいものに見えるかもしれないが、非常にコストがかかっており、自然環境にとっても決して良いものではない。他の地同様、ブルゴーニュの生産者の中には、藁で作った俵を注意深く畑に配置して意図的に燃やし、冷気を分散させようとする者もいる。そうなれば地元の人々はその煙との共存方法を学ぶ必要もある。

霜はブルゴーニュの北部にあるシャブリでは日常的な問題であるため、生産者の中には土壌とブドウを温め、氷の層でブドウを保護するためのスプリンクラーを設置している場合もある。だがこのシステムも、例えばフォーシュロンにとってはコストがかかりすぎる選択肢だ。ナパ・ヴァレーや、ニュージーランドのマールボロでよく見られる、冷気が滞留するのを防ぐための扇風機も同様だ。ヘリコプターを使って畑の空気を動かすこともあるし、ほとんどのブドウの仕立てに使われているワイヤーを温めるという、コストのかかる手法もある。だがいずれにしてもエネルギー効率は非常に悪い。

ボルドーの最も名の知れたワイン生産者たちはちょうど今2020ヴィンテージを恒例のプリムールでお披露目しようとしているが、深刻な霜害は彼らから値下げという概念を奪うに違いない。アントル・ドゥ・メール在住でMWのジェームス・ロウサー(James Lawther)が4月8日、メールで知らせてきた霜の状況は次の通りだ。「昨晩とその前の晩、気温が‐4℃まで下がり乾燥していましたから、そこらじゅうで大きな被害が出ました。報告によれば特にマルゴー、リストラック、ムーリ、バルザック、そしてグラーヴ南部、サンテミリオンの中でも標高の低い部分がひどいようです(古い言い伝えにもある通り、川に近いポイヤックやサンテステフは比較的被害が少なかった)。私の周囲のブドウも影響を受けていて、知人の女性栽培家は本当に取り乱していました。地元で藁を燃やしているのを久しぶりに目にしましたよ。」

2021年4月、サンテミリオンのシャトー・コルバンで設置された藁の俵

イタリア北部のヴェネト州では、ブドウや果樹がほんの2週間前まで27℃にまで上昇した気温を享受していたが、4月7日と8日の夜に突如として-5℃まで気温が低下した。ピエモンテのラ・モッラの、バローロの生産者アルベルト・コルデロが共有してくれた写真からはブドウが長期的なダメージを受けた様子が明らかに見て取れた。「今後20~25日間の気候によりますが、これが私たちの生活です。これを受け入れなくてはなりませんし、私はそうしています」。

だが、彼のワインはエミリー・フォーシュロンの何倍もの値段で売れることを忘れてはならない。

経験上、ヴィニュロンたちが霜の心配をせずにゆっくり眠れるようになるのは5月に入ってからのことになる。

原文

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