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そのストッパーはどこまでエコ?

Saturday 30 March 2024 • 1 分で読めます
Cork oaks stripped for corkk production APCOR

Credit for the image of cork oaks stripped for cork production: APCOR.
ワインボトルに適しているのはコルクか、スクリューキャップか?

今世紀初頭、ワイン業界で繰り広げられたこのテーマに関する熾烈な、そしてしばしば極端な議論は、どちらがワインに適しているかという点が中心だった。

だがその後、コルクもスクリューキャップも、その品質が大幅に向上した点を考慮しておかねばならない。さらに多くの消費者、そして生産者が地球に最も優しいものを求める現代、あらゆる事柄の判断がより複雑化していることも事実だ。コルクとスクリューキャップのどちらがエコなのか、本当に公平で完全な比較基準はない。だからなおさら、私たちの判断基準もあいまいとなるのだ。

現在、年間59億個ものアルミ製スクリューキャップが販売されている。これに対し天然コルクは131億個、減少傾向にあるプラスチック製コルクは約10億個だ。スクリューキャップが広く使われるようになったのは2000年頃、オーストラリアとニュージーランドのワイン生産者たちが、ほぼ満場一致で(多くの場合は強い憤りに駆られて)スクリューキャップの主流ブランド、スティルヴァンを選んだことがきっかけだ。彼らは当時、コルク産業の本場であるポルトガルから輸入していた劣悪なコルクにうんざりしていたのだ。

というのも、これらコルクは相当の割合で、コルクに関連する最も一般的な汚染であるTCAの影響を受けていたためだ。TCAはワインを飲めないほどひどい状態にすると知られているが、実はそこまで明確でない場合の方が悪質で、様々な程度でワインの果実味を奪ってしまう(訳注:すなわち、コルクのせいだとわからず、「このワインは果実味に欠ける低品質なワイン」と判断されてしまう)。また、不完全なコルクはワインに悪影響をもたらす酸素を大量に取り込んでしまうという厄介な性質がある。それに対しスクリューキャップは生産者に100%の一貫性、つまり彼らが瓶詰したそのままの味わいが消費者もとに届くというメリットを提供してくれるし、酸素透過率もワインに合わせて生産者が選択できる。

ただし、最近はスマートなデザインのものも入手可能になったとはいえ、スクリューキャップはまだまだ外観が美しいとは言い難い。また、多くのソムリエや消費者は、コルクを抜く儀式や音を積極的に楽しむ傾向にある。

一方、世界的な尊敬を集めるオーストラリアの研究機関AWRIによる天然コルクの弊害に関する詳細な研究は大きな反響をもたらした。その結果として消費者と生産者、両者の多くが「スマートな」(訳注:暗に高価な、あるいは高級な、という意)ワインにもスクリューキャップを支持するようになってきた(下記のおすすめワインを参照のこと)。

しかし、国によって受け止め方は様々だ。アメリカ人は一般的にスクリューキャップを警戒するし、中国人も同様だ。そのため、2020年に懲罰的な輸入関税が課されるまで(先日ようやく解除された)、すなわちオーストラリアのワイン生産者が中国に大量のワインを輸出していた時代には、中国向けボトルのほとんどにオーストラリア人愛用のスティルヴァンではなく天然コルクを採用していたという。生産者の中には、コルクの代わりにガラス製のヴィノロックを使用したものもいた。

(近年オーストラリアを含む各国で、新進の若手生産者たちが大手の老舗と差別化する手段の1つとしてスティルヴァンではなく天然コルクを選ぶようになってきた。オーストラリアのワイン愛飲家のほとんどが長い間放置していたコルク抜きが、再び日の目を見るようになっているそうだ)。

スクリューキャップは、省スペースなバッグ・イン・ボックスの人気が高い北欧で、あえて瓶入りのワインを購入する人々に広く受け入れられている(スウェーデンの専売公社システムボラゲの報告によれば、販売されているワインの60%はバッグ・イン・ボックスで、瓶で販売されているワインのうち天然コルクを用いているものは30%にも満たない)。イギリス人もスクリューキャップには慣れたものだ。2023年にバルクで輸入されたスティルワインは41%を占め、その全てがスクリューキャップだったことも一因だろう。ちなみに現在、イギリスの瓶詰業者の瓶詰設備はすべてスクリューキャップ専用だ。同時に、より高価なワインを飲むイギリス人の多くは、コルク樫の樹皮を円柱にくり抜いた物体より、品質が安定している栓の方が良いという議論があることをよく知っている。

ところが、ノーフォークにあるイギリスで最も多忙なボトラー(瓶詰業者)、ブロードランド・ドリンクスは最近、15年ぶりに天然コルク用に設計された瓶詰設備を再導入すると発表した。これは「高級品を扱う販売店やブランド・オーナーが炭酸ガス排出量の削減に貢献できるよう」デザインされたものだという。

エコ意識が高まっているこの時代、「ナチュラル」という言葉はコルクを救う魔法の言葉と言えるだろう。はるか昔の2010年、チャールズ皇太子(当時)は、コルクの森がイベリア半島の生物多様性の保全に重要な役割を果たしていると述べたが、その言葉は当時多くの人に響かなかった。デカンター誌は、「コルク産業が広報の現実をいかに把握していないか、そのお粗末ぶりを改めて証明した」と酷評したほどだ。しかし、もう少し大雑把にわかりやすく説明すると、コルクの森は野生生物の自然な生息地であり、地元の人々に伝統的な生活様式を提供しているということだ。そして、おそらく今日多くの人々が気にするであろうこととして、重要な炭素吸収源として機能していることを指摘しておこう。

2008年以来、圧倒的なシェアを誇るコルク製造業アモリムは、再生可能資源としてのコルクの持続可能性をスクリューキャップと比較する研究を続けている。その結果は徐々にワインのプロたちの間にも浸透しつつある。例えば、スクリューキャップの製造に使用される水の量はコルク処理に使われる量よりはるかに少ないとされている。しかし、アモリムをスポンサーとして行われた研究によれば、温室効果ガスの排出量だけでなく、再生不可能エネルギー消費やその他の重要なパラメータにおいては天然コルクの方が優れていることが示唆されたという。現在、アモリムは顧客に対し、注文したコルクが採取されたコルク樫の木がどれだけの炭素を吸収してきたかという「気休め」と言えなくもない試算データを提示しているようだ。

一方アルミニウムの持続可能性という観点でのアドバンテージは、無限にリサイクル可能である点だ。実際(缶詰に限らず)そのほとんどがリサイクルされている。ワインのコルクは弾力性が失われるため再利用には向かず、ほとんどが埋め立て処理されているのが現実だ。コルクを効果的にリサイクルするには基本的にポルトガルまで輸送する必要がある。それにはエネルギーを大量に使うし二酸化炭素排出も多くなるため、ライフサイクルアセスメントとしては今のところ評価されない。断熱材、床材、テニスボール、航空機部品など、他のコルク製品に再利用は可能だが、コルク産業にとって最も重要な顧客はワイン産業であり、コルク製品全体の約70%を占めている点は指摘しておきたい。

イギリスとオーストラリアは最近、持続可能性を念頭に置いた厳しい包装規制を策定した。両規制でワインのコルクは現在、多くのプラスチックとともにリサイクル不可に分類されている。イギリスでは将来的にこのような「悪質な」素材の使用に特別料金が課される可能性があるようだ。もっとも、実用的なリサイクルシステムを提案することなく、パッケージングにご大層な基準を課すのは無粋に思えることも事実だが。(スカンジナビアやオンタリオ州のLCBOのようなアルコール独占公社は、イギリスやオーストラリアよりも、はるかに組織的なコルク回収に成功している)

参考までに、私は使用済みのコルクをロンドンのニコラス・ワインの支店に持ち込んでいるのだが、その支店ではコルクを「リサイクル・センターに送っている」というやや曖昧な表現を使っている。イギリスにあるマジェスティックは回収したコルクを砕いて土に混ぜるというエデン・プロジェクトに提供しているそうだ。リコークドUKも使用済みコルクを回収し、リサイクルしている。

イギリスのザ・ワイン・ソサイエティは最近、スティーヴニッジ本社に返送されたり配送車が回収したりしたコルクを粉砕するリサイクル・スキームを開始した。コルク粒子を凝集して造られたディアムも対象となるがプラスチック製コルク(見た目は滑らかな天然コルクに見えるが、弾力性に欠ける)は不可。これらのコルクは最終的に、「適切な大きさの貨物」にまとめてポルトガルに送られる。

オーストラリアでは、APCO構想として、来年までに再利用、リサイクル、堆肥化が不可能な包装材を段階的に廃止することを目指している。そのため、国内では比較的使用例が少ないコルクをどうするかは急務だ。小売業者のダン・マーフィーズは最近、コルクを回収して工場に送り、ワインショップのスタッフ用コルクマットにする計画を開始した。

興味深いことに、APCOは、現在スクリューキャップのライニング(訳注:スクリューキャップの内側に密着させる、ワインと直接接触する部分に用いる部品)として一般的に使用されているPVDC(ポリ塩化ビニリデン)フィルムも、2025年以降は容認できないとしている。スティルヴァンを使うことが多いオーストラリアのワイン生産者たちは、生分解性のある代替品を探す必要がでてきた。(ちなみにオーストラリアは、アルミニウムを抽出するボーキサイトの世界有数の供給国である)。

現在は持続可能性よりも品質面で天然コルクを採用しているワイン生産者もいる。例えば、アモリムは現在、「TCAを検出しない世界初の天然コルク」と謳い、酸素透過率も十分に信頼できる栓を、1個数ユーロで提供している。今世紀初頭には5~6%とも言われたコルクの欠陥を明らかに大幅に改善した事例だろう。私は今でもTCAの影響を大きく受けひどい「ブショネ」に出くわすことはあるが、それはたいてい10年以上前に瓶詰めされたワインだ。

多くの人がそうであるように、私はワインにとってスクリューキャップは完璧なコルクと同じくらい良いという確信はある。だが、そのどちらが地球環境に良いのかという点では、まだ結論を出せていない。

スクリューキャップを使った優れたワイン

南オーストラリア州のグロセットやオークランドのクメウ・リヴァーなど素晴らしい先駆者たちのおかげで、オーストラリアとNZのワインは多くが当てはまる。

ブリュンデルマイヤー、エヴァ・フリッケ、ヒルシュ、ユルチッチ、ヨゼフ・ライツ、ニグル、パフル、プラーガー、サロモン・ウントホフ、ヘルベルト・ツィリンガーなど、オーストリアとドイツの生産者も多い。

フランスは少ないが、ドメーヌ・ベギュード、ドメーヌ・デ・ボマール、ジャン・クロード・ボワセ、ドメーヌ・ラロッシュなどが思い浮かぶが、一部のワインだけという場合もある。

イタリアでは、リヴィオ・フェッルーガ、フランツ・ハース、イゾレ・エ・オレーナ、マッソリーノ、ピエロパンが、一部のワインにスクリューキャップを使用している。アメリカでは、ベッドロック、CADE、プランプジャック、レッド・ニュート、タブラス・クリークが、そして2002年にニューヨークで手の込んだコルクの「葬式」を企画し、私が弔辞を述べたボニー・ドゥーンもそうだ。

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原文

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