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アルコール控え目、でも香りは控えずに

Saturday 14 March 2015 • 6 分で読めます
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これはフィナンシャル・タイムズに掲載した記事のかなり長いバージョンである。

南半球のブドウ栽培家は今頃これまでになく早い収穫期に取り組んでいることだろう。これも気候変動の影響の一つだが、我々のようなワイン消費者が最も影響を受けるのはアルコール度数の上昇だろう。もちろん原因は他にもあるのだろうが、暑い夏はアルコール度数の平均値を1980年代の12~12.5%から現在の13.5~14.5%にまで引き上げるのに間違いなく一役買っている。

生産者たちは発酵によってアルコールへと変化するブドウの糖度が、その他のワインの香り、味、骨格になる重要な成分やタンニン、すなわちフェノリックよりも格段に早くブドウに蓄積していくのを愕然としながら見つめてきた。

これは非常に好ましくない現象である。アルコール以外にほぼなんの取り柄もないワインなど、だれが飲みたいと思うだろうか。オーストラリアの生産者の中には最近、単にブドウを早く摘み、アルコール度数が低く、自然の酸が高い状態で瓶詰めすることで対応している人たちもいるが、それでは香りに欠けるワインとなる可能性がある。

もっと一般的な戦略は、特に温暖なワイン生産地で行われるのが、ブドウを樹上に長く、干しブドウのように干からびるほど放置し、フェノリックが高まるのを待つ方法だ。そこに加酸(容赦ない太陽光の下で成熟したブドウにはよく用いられる方法である)を行うだけではなく、過干渉とも言える賛否両論の醸造技術を用いてアルコールを下げる。

ただ、全ての生産者がこれに賛同しているわけではない。中には綿密にタイミングを計算して灌漑をおこない、糖の成熟のタイミングにフェノリックのそれを近づける試みをしている生産者もいる。ただ、この問題に直面しているワイン産地は年々水不足が深刻化する傾向にある地域が多く、満足のいく長期的な解決方法とは言えない。また、最終物であるワインに水を加える方が畑に水を撒いてブドウに水を供給するより合理的だと主張する者もいる。

例えばローヌ渓谷のマイケル・シャプティエは暑い年には多くのシャトーヌフ・デュ・パプが賢明な「加湿」によって品質が改善できるかもしれないと公言している。また、マストの潜在アルコールの上昇を懸念するチリでは、ワイン法を改正し7%まで水の添加が許されるようになった(ただしこれをアンデス山脈を越えたアルゼンチンで行うとワインメーカーは刑務所行きになる可能性がある)。限度を決めて水を加えることはカリフォルニアでは長いこと認められてきたし、オーストラリアでも「添加物を混合する際の補助的な目的での使用」は許可されている。これらがすべて、よりバランスの良いワインのために行われるのであれば、私個人としては何の異論もない。

それよりも私が気になるのは、スピニング・コーン逆浸透膜法などの高価な物理的技術だ。これらは今や普通に、そしてその分価格に上乗せされる形でナパ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンなどに使われている。ただし、記録的に涼しかった2010年や、特に2011年は必然的に通常より成熟度の低いワインが出来上がった。

私は最近、この過熟の問題を別の角度から解決するアイデアを携えてナパ・ヴァレーに来た人物に出会った。フィリップ・バスコール(Philippe Bascaules)は2011年、ボルドーのシャトー・マルゴーからフランシス・コッポラの歴史的なイングルヌック・ワイナリーに移って来た。2年間続けて、平均的で良好なヴィンテージを観察した後、彼は良いバランスのワインはブドウを早く成熟するよう促すことで作ることができると確信した。

そのために、彼は剪定のスケジュールを完全に変えた。一般的にナパの栽培家はフランスよりも遅い2月から3月に剪定を行う。これは霜が若い芽を枯らしてしまう危険を最小限にし、木の幹の感染症の拡大を食い止めるためだ。しかしおそらくコッポラから自由裁量権を与えられているバスコールはこう主張する。「ブドウの木の健康を保証しなくてはいけないという考え方には納得できないんだ。焦点はワインの品質に置かれるべきだろう?」

その結果、2013と2014の収穫で実験したあと、今彼は全てのブドウの剪定を12月から始めている(歴史的なワイナリーの前に並ぶ、きれいに剪定された先月のブドウの写真を見てほしい。一方で隣の畑のブドウは発芽しているにも関わらずまだ剪定されていない)。そして彼はそれらが十分なフェノリックを得て8月下旬から9月、この近隣では非常に早い時期に成熟すると確信している。「日照時間がとても大事だとわかったんだ。9月と10月では大きな違いがあるからね。10月に2週間成熟させたとしても、7時から昼まではすごく寒いこともあるからあまり大きな影響はないんだよ。」

「2011年にチームで成熟過程について議論したのを思い出すね。彼らは製品の一部に干しブドウ状のブドウを用いるべきだと言ったんだけど、僕は納得いかないんだ。それじゃあその土地や品種の味わいが失われてしまうからね。そういうワインはもっと暖かい場所なら作ってもいいけど、本当につまらないと思うんだ。僕はそうなる前の段階で摘みたいし、タンニンも欲しいんだ。」

地元の人の中にはこの従来の慣習を劇的に変えることに懐疑的な人もいるが、2013のイングルヌック最上級の赤であるルビコンに私は強い感銘を受けたことを述べておきたい。これは素晴らしいバランスと比類ないエネルギーに満ちたワインだが、早期の剪定及び収穫から生み出されたものだ。

もう一つ、長きに渡り力強さとエレガントさの間の綱渡りをしてきたナパ・ヴァレーのカベルネと言えば、コリソン(Corison)だ。キャシー・コリソン(Cathy Corison)はブドウの樹齢を考慮に入れ、多くのキーパーソンよりも早く収穫を行う。これは近隣のスポッツウッド(Spottswoode)にも少し似ている。スポッツウッドを経営する女家長、ノヴァクはマヤカマス山脈にちょうど良い具合にある切れ目から流れ込む太平洋の涼しい風も助けになると考えている。

同様なことがルー・キャプサンディ(Lou Kapcsándy)にもあてはまる。彼はステート・レーン・ヴィンヤードが世紀の変わり目に売りに出たと知るや飛びついた。そこのブドウからつくられるワインを何年もの間ベリンジャーのプライベート・リザーヴ・カベルネとして購入し続けていたのだ。植え替えの前に彼は正確な太陽の向きやサン・パブロ湾からの風の向きに関するNASAのあらゆる衛星データを解析してくれる専門家を雇い、理想的な垣根の配置を決めた。この意図は、移住者であるこのハンガリー人によると「ブドウを日焼け、脱水、過剰な糖の蓄積、それに伴う糖とフェノリックの熟成のアンバランスから守ること。干しブドウや煮込んだプラムの香りを防ぎ、最終ワインのアルコール度数をコントロールすること」だそうだ。

彼はそれにかかったコストを教えてはくれなかったが「これまで使った資金の中で最も有意義」だったそうだ。最終的には垣根の向きは地磁気の南北に沿うという結論が出たので、私は彼の投資に意味があったのかと思わずにはいられなかったが、その成果は明らかで、筋肉質だが威圧感のないカベルネが出来上がった。コッポラ同様ボルドー1級シャトーの専門知識を求めた彼のコンサルタントはシャトー・ラトゥールのデニス・マルベック(Denis Malbec)である。

最終アルコール度数を下げる別の方法は、広く使われている特別に選択した単一の強力な酵母ではなく、環境酵母(ambient yeast)(時に「野生酵母(wild yeast)」という紛らわしい言い方をされ、幅広い属や種を含む酵母)に発酵を任せることだ。また、オーストラリアの常に実用主義なワイン科学者たちは糖のアルコールへの変換効率が低く、ワインのアルコール度数を下げられるようない酵母を単離する試みを始めている。

しかし世界中各地の多くの生産者にとって、バランスのいいワインはバランスのとれたブドウ―すなわち樹齢が高く、無灌漑のものを指す傾向にある―から作り出されるものである。そしてビオデナミ栽培を取り入れている人々は、まるで頭がおかしくなったように思える「実践的」な栽培法を月の満ち欠けに従ってブドウ1本1本に対して行い、そのように育てられたブドウは慣例的に育てられた近隣に比較して、バランスよく、非常に早く、より完璧に成熟すると報告している。もしかしたらこれが本当の答えなのかもしれない。

尊敬を集めるソノマのリトライ(Littorai)とニュージーランド、セントラル・オタゴのバーン・コテージ(Burn Cottage)のワイン生産者、テッド・レモン(Ted Lemon)は両半球でビオデナミを実践しており、これが答えだと確信している。彼はカリフォルニアの軽くフレッシュなワインを作りたがる流行を観察してきてきたが、この傾向は2000年代終盤の不況と共に始まったと主張する。「誰もどこに行ってもどんなワインでも売れなかった。だから彼らはなにか実験的なことをした方がましだと考えたんじゃないかな。」彼はまた、年々影響力を増すアメリカのソムリエで、不況の時代以降も「ワイン・ディレクター」やワイン・セレブへの転換をせずに現場で働き続けてきた数少ない人物たちに質問したところ、その時代から料理が非常に軽くなってきたため、より軽いワインを組み合わせるのが理にかなうようになってきたと誰もが話したということだ。

アルコール控え目、香りは高めのワイン

以下のワインは私が自信を持ってお勧めする、アルコールが体感よりも低かったワインである。もちろん、13.5%の赤をたくさん掲載してもよかったのだが・・・

甘口のドイツのリースリング(7-9%)

ヴィーニョ・ヴェルデ (9-11%)

Franck Peillot 2013 Roussette du Bugey (12%)
Vine Trail (ただし私がテイスティングしたのは2012だけである)

Emrich Schönleber, Mineral Riesling trocken 2013 Nahe (12%)
6本で保税価格£85、Justerini & Brooks

Luis Pato, Maria Gomes 2013 Beiras (12.5%)
約£10 Bottle Apostle, Butlers Wine Cellar, Corks of Cotham, Highbury Vintners およびその他小売店

Samuel Billaud, Montée de Tonnerre Premier Cru 2012 Chablis (13%)
1ダースで保税価格£180 Lay & Wheeler

ピンク

Circumstance, Cape Coral Mourvèdre Rosé 2014 Stellenbosch (12.5%)
£8.95 ND John, £9.75 Camber Wines, £10.99 Slurp.co.uk

Miguel Torres, Reserva del Pueblo Pais 2013 Maule (12%)
£7.50 The Wine Society, £9.75 Noel Young

Montes, Outer Limits Cinsault 2014 Itata (13%)
£15.99 Noel Young

De Martino, Gallardia Cinsault 2014 Itata (13%)
£66.10 for six Exel Wines

Alpha Estate, Xinomavro Hedgehog Vineyard 2010 Amyndeo (13.5%)
£14.90 Maltby & Greek and other independents

Cono Sur, 20 Barrels Cabernet Sauvignon 2011 Maipo (13.5%)
£14.95 The Wine Society

取扱者は wine-searcher.comによる

(原文)

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