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避暑ワイン
真夏に飲むべきワインとは。この記事のショート・バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。上の写真は先日ヴィスバーデンで開催されたMWシンポジウムでエゴン・ミュラーとジャンシスが典型的な夏向けワインを紹介しているところ。写真提供はArne Landwehr。 温暖化によって夏の気温が高くなることは、生産者にとって収穫期が早くなることを意味する。ではワイン消費者にとっての意味はなんだろう。 赤ワインを飲もうと決めている人にとって、気温の高さは大きな壁となる。どんな飲み物も爽やかさをもたらしてくれる要素は持っているが、ワインの温度が20℃を超えると緻密さは失われ、スープのように感じられてしまう。事実、カジュアルなバーやレストランで最も多く見られる失敗は、ワインの保存温度が高すぎたことに由来する。私自身アイスバケツや、ひどい場合には氷を持ってきてくれるよう頼んだ経験も少なくない。 私は夏、あるいは冬でも部屋の気温が高い場合にはいつも、赤ワインを13℃に保っているセラーから出したばかりの温度で提供するか、提供する30分ほど前に冷蔵庫で冷やしてから提供する。 冷蔵倉庫にでも住んでいない限り、ワインはその色に関わらず、グラスに注いだ瞬間から温度が上がり始める。その温度上昇をいかに阻止するか、特に真夏に外でワインを楽しむ場合には非常に重要な問題となる。私は保温機能を備えた、2重構造で中が真空になったボトルホルダーを愛用している。特に透明なタイプは、私がよくやるようにテーブルに複数のボトルを並べる際には(ボトルが見えるので)便利だ。 そもそも、多くの赤ワインには若干温度を下げるメリットがある。特にタンニンが低い、若くて安価な赤ワインや熟成したリオハ、ピノ・ノワールや軽めのブルゴーニュなどがそうだ。柔らかなロワールの赤やボージョレに代表されるガメイ、一部でglou-glou (訳注:フランス語で「ゴクゴク」のような擬音語)と表現される最近流行りのジューシーな赤ワインなども、積極的に冷やして提供するために造られている。 ただし、天然の保存料とも言えるタンニンを豊富に含むワインを冷やす場合には注意が必要だ。冷やすことでタンニンの強さが強調されてしまうからだ。例えば典型的な若いボルドーの赤や北イタリアのカベルネなどは、温度が低すぎると抽出しすぎて冷めた紅茶のように感じられてしまう。ただし、これら品種を使ったワインが南北アメリカ大陸で造られている場合には(この表現はあまりに大雑把な一般化なので注意が必要だが)、ヨーロッパのものに比べて熟した柔らかで優しいタンニンを含むことが多く、アルコール度数も高いため、軽く冷やすことはメリットとなることもある。 アルコール度数の上昇は各地で見られるが、これはブドウの熟度の高さに由来する。もちろん、温暖化に伴う気温上昇の結果だ。アルコール度数の高いワインを味わうと、口の中の後方にアルコールによる熱さを感じてしまうことがある。この場合も、ワインの風味が十分に豊かな場合なら、若干温度を下げてやっても問題はない。 一方で明らかに爽やかな夏の飲み物として設計された、アルコール度数の低い赤ワインや白ワインは、イギリスで徐々に一般的になっている。イギリス政府が8月1日からアルコール度数に応じて税率が変わる複雑なシステムを志向するためであり、これらの人気は発表の前からじわじわと上がっていた。イギリスの倉庫には、8月の税制変更前に現行の税率で保税倉庫から引き出してしまおうと、記録的な量のワインが保存されている。 (イギリスでは)アルコール度数が10%以上のスティルワインへの課税が上がり、10.5%から11%と記載されているものに対する増税はわずかだが、11.5%から14.5%と記載のあるワイン、すなわち現実的にほぼすべてのワインは1本あたり44ペンスの増税となる。一方15%以上のワイン、すなわちポートやシェリー、カリフォルニアの多くや南ローヌのワイン、ブドウの成熟が進んだ年のボルドーのワインは97ペンスもの増税となり、1本あたり3.2ポンドも課税されることになる。そこにもちろん付加価値税(VAT)20%がかかるのだから、秋には大幅な価格上昇がみられることになるのだ。...
15 Jul 2023